Yellow Roof 's Museum
***< [16] 2016/01/10◆[14] 2016/01/02 >***
2016/01/09
鎌倉アルプス (鎌倉市)
「みんな」や「普通」、「常識」といった言葉を使わないのは、自分が１０歳になるまでに９度の引越を経験したからだろう。行く先々に別の世界があり、別の人々がいて、百人百様の思いや考えがある。成長するほど本音ではなく建前の壁にぶつかったが、それは決まっているから覚えるもので、理由を訊いても確かな答えはない。
「みんな」や「普通」、「常識」といった言葉を使わないのは、自分が１０歳になるまでに９度の引越を経験したからだろう。行く先々に別の世界があり、別の人々がいて、百人百様の思いや考えがある。成長するほど本音ではなく建前の壁にぶつかったが、それは決まっているから覚えるもので、理由を訊いても確かな答えはない。
鎌倉アルプス (鎌倉市)
新しい世界はどんなところか。「みんな」とは誰と誰のことか。その「常識」は誰から聞いたことなのか。「普通」という言葉は何を意味していて、誰の視点で語られているのか。そうしたことを少しずつでも確認していれば、そのうちには仕組みや構造が掴めることがある。その積み重ねで次第に順応が早くなっていった。
新しい世界はどんなところか。「みんな」とは誰と誰のことか。その「常識」は誰から聞いたことなのか。「普通」という言葉は何を意味していて、誰の視点で語られているのか。そうしたことを少しずつでも確認していれば、そのうちには仕組みや構造が掴めることがある。その積み重ねで次第に順応が早くなっていった。
鎌倉アルプス (鎌倉市)
自分になく他の人にあるものは、学びとったり百人百様と片付けることも出来る。しかし、集団に共通する認識や観念は掴みどころがない。人任せにしたり人に合わせたりはできても、いつか確かずにはいられない。自分は信じることができず、それは疑いとも言えない。そうと気付いたのは、ずっと後のことだった。
自分になく他の人にあるものは、学びとったり百人百様と片付けることも出来る。しかし、集団に共通する認識や観念は掴みどころがない。人任せにしたり人に合わせたりはできても、いつか確かずにはいられない。自分は信じることができず、それは疑いとも言えない。そうと気付いたのは、ずっと後のことだった。
建長寺 (鎌倉市)
赤ん坊は言葉より先に歩く。身体の使い方は教えられるものではなく試行錯誤で獲得していくもので、言葉は要らない。五感と身体を通して世界を掴み、少しずつ構造や仕組みを探り、確かめながら行動する。この原初的な方法は、常に変化する世界に対処していくためのもので、自分は手放すことができなかった。
赤ん坊は言葉より先に歩く。身体の使い方は教えられるものではなく試行錯誤で獲得していくもので、言葉は要らない。五感と身体を通して世界を掴み、少しずつ構造や仕組みを探り、確かめながら行動する。この原初的な方法は、常に変化する世界に対処していくためのもので、自分は手放すことができなかった。
鶴岡八幡宮 (鎌倉市)
今では、他の人達が言葉を通じて社会通念や価値評価、既存の知識を基盤としていることを知っている。言わば、それは辞書を引いて意味を知るようなことである。自分は掴んだ意味に言葉を当てているだけで、言葉そのものは表現のための道具である。社会通念や価値評価もまた、借り物の表現ということになる。
今では、他の人達が言葉を通じて社会通念や価値評価、既存の知識を基盤としていることを知っている。言わば、それは辞書を引いて意味を知るようなことである。自分は掴んだ意味に言葉を当てているだけで、言葉そのものは表現のための道具である。社会通念や価値評価もまた、借り物の表現ということになる。
鶴岡八幡宮 (鎌倉市)
言葉で規定された世界は、切り取られ、分解され、元の全体像を失っている。意味をなさぬまま記憶された言葉は、ただの抜け殻にすぎない。世界を紡ぎ直すには、表層の言葉ではなく背後にある構造や仕組みを把握する必要がある。自分にとって言葉は、表面上で片付けるための道具であり、本質とも現実とも言いがたい。
言葉で規定された世界は、切り取られ、分解され、元の全体像を失っている。意味をなさぬまま記憶された言葉は、ただの抜け殻にすぎない。世界を紡ぎ直すには、表層の言葉ではなく背後にある構造や仕組みを把握する必要がある。自分にとって言葉は、表面上で片付けるための道具であり、本質とも現実とも言いがたい。
鶴岡八幡宮 (鎌倉市)
言葉は万能ではない。言葉は事象を説明するための補助線でありながら、無数の意味から選び取った体験の抜け殻でもある。抜け殻を受け取った相手は、そこに「常識」を滑り込ませて基盤と結びつけながら、自分の経験と照らして想像したり推察したりする。しかし、それでは体験を共有したことにはならない。
言葉は万能ではない。言葉は事象を説明するための補助線でありながら、無数の意味から選び取った体験の抜け殻でもある。抜け殻を受け取った相手は、そこに「常識」を滑り込ませて基盤と結びつけながら、自分の経験と照らして想像したり推察したりする。しかし、それでは体験を共有したことにはならない。
鶴岡八幡宮 (鎌倉市)
誤解の多くは言葉のやり取りで生じる。伝えたいものや覚えてほしいものは言葉ではなく、その意味である。自分が言葉に意味を込めても、相手は言葉から意味を汲み取ることになり、必ず齟齬が生じる。しかし、自分が誤解されたり、無知や無力と思われようと、重要なことは相手に意味が伝わることである。
誤解の多くは言葉のやり取りで生じる。伝えたいものや覚えてほしいものは言葉ではなく、その意味である。自分が言葉に意味を込めても、相手は言葉から意味を汲み取ることになり、必ず齟齬が生じる。しかし、自分が誤解されたり、無知や無力と思われようと、重要なことは相手に意味が伝わることである。
鶴岡八幡宮の大銀杏 (鶴岡八幡宮)
樹齢１０００年という鶴岡八幡宮の大銀杏は、２０１０年３月１０日未明に雹や雪混じりの強風により根元から倒れた。現在では注連縄内に残った根から若木が成長しており、輪切りにされて移植された幹からも新たな枝が生えている。
樹齢１０００年という鶴岡八幡宮の大銀杏は、２０１０年３月１０日未明に雹や雪混じりの強風により根元から倒れた。現在では注連縄内に残った根から若木が成長しており、輪切りにされて移植された幹からも新たな枝が生えている。
鶴岡八幡宮の大銀杏 (鶴岡八幡宮)
鶴岡八幡宮 (鎌倉市)
体験は言葉に置き換えると、ほとんど伝わらない。すべてを伝えようとしても、何かが言葉からこぼれていく。言葉は実践からは遠く、現実ですらない。説明するより、黙っている方が伝えることに繋がると思える時がある。そうすれば、相手は言葉ではなく現実を確かめようとするかもしれない。
体験は言葉に置き換えると、ほとんど伝わらない。すべてを伝えようとしても、何かが言葉からこぼれていく。言葉は実践からは遠く、現実ですらない。説明するより、黙っている方が伝えることに繋がると思える時がある。そうすれば、相手は言葉ではなく現実を確かめようとするかもしれない。
鶴岡八幡宮 (鎌倉市)
体験を共有できなければ言葉で表すしかない。意味が伝わったかどうかは、その後の相手の行動と言葉のやり取りの中で確かめていくことができる。つまり、黙っていることと語ること。その往復である。だからこそ、意図や感情は明示的に語らず、相手に根源的な問いや感覚が自然に浮かび上がる表現を自分は探し求めてきた。
体験を共有できなければ言葉で表すしかない。意味が伝わったかどうかは、その後の相手の行動と言葉のやり取りの中で確かめていくことができる。つまり、黙っていることと語ること。その往復である。だからこそ、意図や感情は明示的に語らず、相手に根源的な問いや感覚が自然に浮かび上がる表現を自分は探し求めてきた。
銭洗弁天 (鎌倉市)
意味を伝えるのは自分でも掴むのは相手で、そこに「私」への理解は本質的に必要はなく、時に障害や損失に繋がることもある。まず知るべきは相手の構造で、言動から仕組みを掴み、返答によって確かめていく。対象に感情を重ねても溺れないこと。それは冷徹さではなく、対等であることの無言の表明のようなものである。
意味を伝えるのは自分でも掴むのは相手で、そこに「私」への理解は本質的に必要はなく、時に障害や損失に繋がることもある。まず知るべきは相手の構造で、言動から仕組みを掴み、返答によって確かめていく。対象に感情を重ねても溺れないこと。それは冷徹さではなく、対等であることの無言の表明のようなものである。
銭洗弁天 (鎌倉市)
理解とは、対象に形を与えることではなく、形を変えさせないまま近づくことだろう。自分の思いや感情を優先させるほど、その形は崩れていく。例えばそれは、撮った写真をそのまま使うか、加工やデザインを施したくなるかという違いのようなものである。後者ほど時間と労力が掛かり、対象を取捨選択することになる。
理解とは、対象に形を与えることではなく、形を変えさせないまま近づくことだろう。自分の思いや感情を優先させるほど、その形は崩れていく。例えばそれは、撮った写真をそのまま使うか、加工やデザインを施したくなるかという違いのようなものである。後者ほど時間と労力が掛かり、対象を取捨選択することになる。
佐助稲荷神社 (鎌倉市)
沈黙の中に潜むものを見ようとせず、既存の知識や価値観で塗り潰せば、そこにある微かな変化は見失われる。現象を読み取るだけなら、何を傷つけることもない。目の前で展開されている現実が主で、その解釈や説明、評価は従である。現状を五感で掴みながら変化を加えていくことが技術であり、その経験的集積が技能となる。
沈黙の中に潜むものを見ようとせず、既存の知識や価値観で塗り潰せば、そこにある微かな変化は見失われる。現象を読み取るだけなら、何を傷つけることもない。目の前で展開されている現実が主で、その解釈や説明、評価は従である。現状を五感で掴みながら変化を加えていくことが技術であり、その経験的集積が技能となる。
佐助稲荷神社 (鎌倉市)
自分は社会的な意味で「人間的」であることには違和感を抱いている。人間性を否定したいわけではない。といって、肯定するにはあまりにも不確かな気がする。その違和感は、動物的な知覚や本能的な構造の中にも世界が映っていても、人間だけが言葉という鳴き声に、真の姿が宿るかのように思い込むことにあるかもしれない。
自分は社会的な意味で「人間的」であることには違和感を抱いている。人間性を否定したいわけではない。といって、肯定するにはあまりにも不確かな気がする。その違和感は、動物的な知覚や本能的な構造の中にも世界が映っていても、人間だけが言葉という鳴き声に、真の姿が宿るかのように思い込むことにあるかもしれない。
佐助稲荷神社 (鎌倉市)
評価はつむじ風のようなもので、見る者の位置や時間、条件、価値観でまるで変わってしまう。しかし、枝は揺れても幹は倒れないはずである。人は周囲の評価に流されながら成長し、人生の終焉になってようやく解放されて子供に還っていく。そこから見る景色こそが原風景であり、残った幹こそが真実の姿ではなかろうか。
評価はつむじ風のようなもので、見る者の位置や時間、条件、価値観でまるで変わってしまう。しかし、枝は揺れても幹は倒れないはずである。人は周囲の評価に流されながら成長し、人生の終焉になってようやく解放されて子供に還っていく。そこから見る景色こそが原風景であり、残った幹こそが真実の姿ではなかろうか。
佐助稲荷神社 (鎌倉市)
人間の営みは、自然の営みの一部分にすぎない。そうした視点からは、人間のつくる制度や論理もまた、自然現象のように見えてくる。そう思えたとき、判断はより確からしさに近づいていく。自然には正しいものも誤ったものもない。どこかに均衡点がある。そこに立てれば、正誤は人それぞれの価値観であることも判ってくる。
人間の営みは、自然の営みの一部分にすぎない。そうした視点からは、人間のつくる制度や論理もまた、自然現象のように見えてくる。そう思えたとき、判断はより確からしさに近づいていく。自然には正しいものも誤ったものもない。どこかに均衡点がある。そこに立てれば、正誤は人それぞれの価値観であることも判ってくる。
長谷寺からの眺望 (鎌倉市)
均衡点に立って眺めてみれば、合理性や効率の言葉で語られる世界には、小さなずれも見えてくる。そのずれも正誤ではない。例えば、道が整えられるほど歩きやすくなるが、逆に、脚力は維持しにくくなっていく。それは現に今ある世界の構造であり、社会や時流の変化であり、百人百様の人々が作り出す渦である。
均衡点に立って眺めてみれば、合理性や効率の言葉で語られる世界には、小さなずれも見えてくる。そのずれも正誤ではない。例えば、道が整えられるほど歩きやすくなるが、逆に、脚力は維持しにくくなっていく。それは現に今ある世界の構造であり、社会や時流の変化であり、百人百様の人々が作り出す渦である。
長谷寺 (鎌倉市)
秩序はつくるものではなく見出すもので、ある配置、ある重なり、ある間合い。それらがたまたま生み出した関係のことである。現実は絶えず変化し続けており、均衡点も常に移動し続けている。秩序があるからには無秩序もあり、無秩序を片付けるための無数の秩序が混沌と共存している。
秩序はつくるものではなく見出すもので、ある配置、ある重なり、ある間合い。それらがたまたま生み出した関係のことである。現実は絶えず変化し続けており、均衡点も常に移動し続けている。秩序があるからには無秩序もあり、無秩序を片付けるための無数の秩序が混沌と共存している。
長谷寺駅 (鎌倉市)
境界は、線を引くことで生まれるのではなく、違いが重なりあって見えてくる。その違いを切り分けずに持ち続けることでしか、両側の全体像に触れることはできない。光があれば影があり、動があれば静もある。価値観にも境界線がある。真偽、善悪、美醜、好悪、優劣…。ただ、それは人それぞれに異なる心の中にある。
境界は、線を引くことで生まれるのではなく、違いが重なりあって見えてくる。その違いを切り分けずに持ち続けることでしか、両側の全体像に触れることはできない。光があれば影があり、動があれば静もある。価値観にも境界線がある。真偽、善悪、美醜、好悪、優劣…。ただ、それは人それぞれに異なる心の中にある。
七里ヶ浜 (鎌倉市)
風景を見ているとき、どこまでが風景で、どこからが自己の内面なのかが分からなくなるときがある。そのあいまいさに身を置いて、線を引かずにいる時間こそが現実かもしれない。価値観に身を置くか。対象に寄り添うか。砂浜に打ち寄せては引く波のように、有形無形の混沌には境界もない。
風景を見ているとき、どこまでが風景で、どこからが自己の内面なのかが分からなくなるときがある。そのあいまいさに身を置いて、線を引かずにいる時間こそが現実かもしれない。価値観に身を置くか。対象に寄り添うか。砂浜に打ち寄せては引く波のように、有形無形の混沌には境界もない。
七里ヶ浜 (鎌倉市)
美しさは、整っていることよりも、整わなさの中に見出される。壊れかけた形、途切れた線、かすれた色。そうした美しさは指し示すことができない。なぜなら、美しさは現実の中ではなく、自分の中にあるからで、言葉にした途端に手のひらから零れ落ちていく。
美しさは、整っていることよりも、整わなさの中に見出される。壊れかけた形、途切れた線、かすれた色。そうした美しさは指し示すことができない。なぜなら、美しさは現実の中ではなく、自分の中にあるからで、言葉にした途端に手のひらから零れ落ちていく。
七里ヶ浜 (鎌倉市)
選ばれなかったもの、捨てられたもの、忘れられたもの。そこにも確かに時間が流れ、営みがあった。光の当たる場所だけで世界が保たれているのではない。目を逸らされ、沈んでいったものたちもまた、全体を紡ぐ見えない糸で、断ち切られれば、世界は音もなく崩れていく。
選ばれなかったもの、捨てられたもの、忘れられたもの。そこにも確かに時間が流れ、営みがあった。光の当たる場所だけで世界が保たれているのではない。目を逸らされ、沈んでいったものたちもまた、全体を紡ぐ見えない糸で、断ち切られれば、世界は音もなく崩れていく。
七里ヶ浜 (鎌倉市)
絶対と言うことはできる。しかし、絶対ということは存在しない。決めることは出来てもあらかじめ決まったことはない。世界を把握することはできない。現実は流動しており、自分にできることは、ただ世界を保留しておくことだけである。
絶対と言うことはできる。しかし、絶対ということは存在しない。決めることは出来てもあらかじめ決まったことはない。世界を把握することはできない。現実は流動しており、自分にできることは、ただ世界を保留しておくことだけである。
七里ヶ浜 (鎌倉市)
意味を付与するよりも、意味の外にとどまることの方が、長く世界を見ていられる。体験するということは、事実の収集ではなく、まして言葉に置き換えることでもなく、そこにあるものと自分の間にある沈黙を保ち続ける試みではなかろうか。
意味を付与するよりも、意味の外にとどまることの方が、長く世界を見ていられる。体験するということは、事実の収集ではなく、まして言葉に置き換えることでもなく、そこにあるものと自分の間にある沈黙を保ち続ける試みではなかろうか。
七里ヶ浜 (鎌倉市)
自分もまた、変化の流れの中にある存在である。変わるということは、終わりではなく一つの通過点にすぎない。変わる前と、変わった後。そのどちらにも目を向けてはじめて、何が変わらなかったのかが見えてくる。移ろいゆく中にあって、たしかに残るもの。それは変化を通してしか浮かび上がらない。
自分もまた、変化の流れの中にある存在である。変わるということは、終わりではなく一つの通過点にすぎない。変わる前と、変わった後。そのどちらにも目を向けてはじめて、何が変わらなかったのかが見えてくる。移ろいゆく中にあって、たしかに残るもの。それは変化を通してしか浮かび上がらない。
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