Yellow Roof 's Museum
ヘクソカズラ (ヤイトバナ) リンドウ目アカネ科 Paederia foetida
ヘクソカズラ (大田区平和島公園) 2022/06/24
ある日、このホームページを実家のテレビに映して母親に見せながら話をしていると、赤ん坊の頃からずっと変わらないと言い出した。何故か完成された玩具は嫌がり、積木のような物を与えると一人でずっと遊んでいたという。じっと見つめていたかと思うと、組み合わせたりバラバラに分けてみたり、違う物と組み合わせたり、黙々と様々なことを試していたらしい。
橋の袂に繁茂するヘクソカズラ (大田区大和大橋) 2022/06/24
実践的な知識のほとんどは言葉にならない。赤ん坊は積み木で遊んでいるうちに物の形や色彩、大きさや重さ、性質や仕組みなどを段々と把握する。三角や丸、赤や青といった言葉や力学の知識は積み木遊びには必要がなく、そもそも言葉がほとんど理解できない。母は車に興味はないが、白黒写真の背景に並んだ車のうちの1台が自分の家の車だと指摘できるし、60年以上前の写真を見てこれは誰それのルノーだと言う。父を遊びに誘いに来るが、二人乗りだから母は乗せてもらえなかった。「座席の後ろなんかこんな狭くて」と手を広げてみせる。それこそが知識ではなかろうか。
ヘクソカズラ (大田区平和島公園) 2022/06/30
雑草は入り混じって生えているもので、この写真にはアスファルト舗装や車道分離用の縁石も写っている。正確には公園の中ではなく公園の外周で、1車線道路のため縁石が近い。植物の下はガードレールである。ヘクソカズラに蕾も見当たらないから夏の前で、左下は花が終わったシャリンバイで緑色の小さな果実が点々のように写っている。一番左に突き出ているのは幼木のトウカエデである。
ヘクソカズラ (大田区平和島公園) 2022/06/30
Googleレンズは類似画像のランキング表示で、ヘクソカズラ属の何種類かと類似別種の一覧が出る。これは植物比較のための情報として利用でき、類似種を識るきっかけにもなる。画像の一部を指定すると名前が絞られることもある。しかし、その部分の画像がたまたま別の対象と類似しているだけかもしれない。
ヘクソカズラの葉とアレチハナガサの花 (大田区大和大橋) 2022/08/04
類似画像検索は実に様々な結果を表示する。他国の植物も出れば、違う植物が1つだけ表示されたり、似た画像が見つからないこともある。そもそも写真は視覚情報の一部分に過ぎず、大きさや気候、環境など含まれない情報は無数にある。葉では絞りきれなくても、花だけ切り取ればアレチハナガサが高順位に表示される。しかし、何種か入り混じった画像では別々の植物ではなく同一植物と認識される可能性がある。
ヘクソカズラ (大田区大和大橋) 2022/08/04
知っている植物の多くは花や実しか知らなかったり、葉しか見たことがなかったりする。名前を聞いたことがあっても見たことがない植物もある。植物には成長変化や環境変化や地域的な個性もあり、変種や雑種、類似別種もある。同じ場所でそれまで気づかなかった植物を見つけたことも一度や二度ではない。
ヘクソカズラ (大田区大和大橋) 2022/08/04
確認しようとしなければヘクソカズラは目に入らない。気が付かないのではなく植物や雑草と捉えて纏めて見過ごすのである。雑草どころか橋や歩道としか認識しないまま通り過ぎることもある。ヘクソカズラは日本全土どこにでもある在来種で、手入れすればするほど競合種が一掃されて繁茂しやすくなる。植物相が安定した野山では隙間を見つけられず、草刈りの機会を狙って人里で芽を出すというのが雑草の一つの在り方のようだ。
ヘクソカズラ (帷子川遊歩道) 2022/08/07
名前は知らなかったが、ヘクソカズラの花は知っていて、葉や実の手につく臭いも知っている。けれども、実物には名札も無く、植物が名乗ることもなければ日常会話にも出てこない。花には花弁、子房、萼、雄蕊や雌蕊、花冠、花柱、花柄といった植物学上の言葉があり、憶えておけば識別の一助になるが、例えばヘクソカズラの花冠が5裂していることを知らないと識別できないといったことはない。花冠が5裂する植物は他にいくらでもあり、かなり近づかないと5裂していることは分からない。
ヘクソカズラの花と蕾 (大田区平和島公園) 2022/09/07
暗黙知の領域は膨大で、体験を伝えるには同じ経験をしてもらう他はない。暗黙知から抜き出した形式知からは大半の情報と意味が失われて実質的な理解度は少ない。例えば水泳の本は、泳げる人にとっては意味があるが、泳げない人にとっては現実ではなく想像で補うしかない。そもそも魚は形式知を理解できるから泳げるわけではない。形式知と実践知識はまったくの別物である。
ヘクソカズラ (大田区平和島公園) 2022/09/09
花や実は際立って目立つので区別しやすいと思っていたが、近似種との判別は果実の色や形だったり、芽の付き方だったり、葉の艶や大きさや厚みだったり、葉の裏の毛の多少や色彩だったりすることもある。長年フィールドワークをしている人たちはノギスや虫眼鏡、顕微鏡、採取道具、一眼レフなどを持ち歩いて研究を重ねたりしているが、自分はスマホで撮った写真を見比べたり、ネット上の写真と見比べる程度である。
ヘクソカズラの実 (大田区平和島公園) 2022/10/13
この写真を画像検索するとブドウ属も出てくるが、検索結果のどれを受け入れてどれを退けるか選択肢から1つに決めたり選択肢に無いと決めるのは自分である。しかし、単なる観察では仮決めしかできないかもしれない。DNA鑑定できるようになってからも分類学者の見解は様々であり、変種に雑種、栽培種は増えるばかりである。決定論ではなく確率論を採らざるを得ない。
ヘクソカズラの実 (大田区平和島公園) 2022/10/13
一方は花が咲き他方は蕾もないことがある。別種との誤認だったり雌雄差だったりすることもあるが、変種か雑種の場合もある。成長段階の差もあれば、毎年花を咲かせるとも限らない。生育環境や病害虫の影響も大きい。街路樹などでは花や実を付けないように剪定されている場合もある。植物種の特徴が特定時期の特定部位の相違であることは多く、何でもすぐ判別できるとは限らない。
ヘクソカズラの花と実 (大田区平和島公園) 2022/10/14
この写真は理想形に近い。花と実と蕾と花が落ちた直後の子房と葉の成長過程まで詰まっている。だが、冬には葉が落ち赤茶けた実だけが残り、それも失われれば蔓だけになる。
ヘクソカズラの実とカナムグラ (帷子川遊歩道) 2022/10/22
近づかなければただの雑草しか見えないが、左端には実らしき紫色で写っていて葉のほとんどがカナムグラだと分かる。茶色の丸い実は近くにノブドウがあるので撮った時は勘違いしたが、変色した葉はどうもヘクソカズラのようで、実もほぼオレンジか茶色に近い。ヘクソカズラは多年草で低木程度に太くなる蔓もあるようだ。
ヘクソカズラ (大田区平和島公園) 2022/11/08
蕾ばかりのヘクソカズラは別種の植物に見える。ヘクソカズラの中には11月になって蕾を付けるものがある。ネット情報で出てくる花季は地域が不明のものも多く、載せている人が実際に調べた結果ではないことも多い。
ヘクソカズラ (大田区大和大橋) 2022/12/09
ヘクソカズラは実を十分に付ければ葉は枯れていくが、12月になってもまだ蕾を付け青々とした葉のものもある。この蔓には葉と蕾しかなく花も実も見当たらない。ほぼ初夏の状態である。このまま冬を越して早春に咲くのだろうか。それとも夏まで咲かないのだろうか。このフェンスには10月ごろまでキカラスウリが絡みついて花を咲かせていたが、実を付けずに枯れて蔓だけ残っている。その後にヘクソカズラが台頭してきた形になる。
コムラサキとヘクソカズラの実 (鶴ヶ峰本町公園) 2022/12/10
ヘクソカズラの実を知っているからコムラサキにヘクソカズラが絡みついていると分かるが、そうでなければどう映っただろうか。
コムラサキとヘクソカズラの実 (鶴ヶ峰本町公園) 2022/12/10
類似画像検索系のアプリでは「コムラサキの実とヘクソカズラの実」といった複合的な結果は返ってこない。ムラサキシキブ、コムラサキ、ヤブムラサキ、オオムラサキ、ノブドウも出てくるが、ヘクソカズラは候補に挙がってこない。この抽出結果は統計であり植物の人気順のようなものだろう。
ヘクソカズラとクスノキの実 (横浜市旭区今川公園) 2022/12/30
サルトリイバラの実が近くにあってこれもそうだと思って撮ったが、よく見ればヘクソカズラである。ヘクソカズラは万葉集に屎葛(クソカズラ)の名が見え、別名の灸花(ヤイトバナ)は実の先の萼の跡が灸の跡に見えることから来ているそうだ。冬になって鳥の声がうるさいほどのところでも実がかなり残っている。
トウネズミモチの葉とヘクソカズラの実 (横浜市旭区大池公園) 2023/01/08
ヘクソカズラの臭いはメルカプタン類と総称される硫黄化合物で、ペドロシドやアルブチンなど大便やスカンクのおならに含まれる成分と似たりよったりのものである。鳥などに食べてもらうため熟してくる秋になると実は臭わなくなるし、そもそも葉をちぎったり未熟な実を潰さないかぎりは臭わない防御用の臭いだ。ただ、虫食いの葉はよく見るし、ヘクソカズラを専門に食べる昆虫も存在する。様々な薬効で全草が民間薬として用いられてきたようだ。
ヘクソカズラの実 (横浜市旭区中希望ヶ丘) 2023/02/05
ヘクソカズラの実の先には花の名残があり、葉も落ちれば実しか残らない。これがかなりの広範囲で見られるので、他の丸い実とよく混同してしまう。外見だけで見分けるには色合いや実の付き方、実の先の萼の跡で見当をつけるぐらいしかない。
ヘクソカズラの実 (大田区平和島公園) 2023/02/07
ヘクソカズラの実は薄茶色だが、日が透けるとオレンジ色に見えて艷やかである。萼の跡が実の先に残ったまま落ちないのが特徴の1つである。
ヘクソカズラの蔓とアキニレの幹 (大田区平和島公園) 2023/02/07
歩道橋の下のヘクソカズラをずっと見てきたが、冬になって他の植物の葉も落ちてしまうまでどこからどう伸びているのか、どんな根元なのか見えなかった。右の太い2本はアキニレの幹で、螺旋状に巻いているのがヘクソカズラである。太さは3センチ弱だろうか。
シャリンバイとヘクソカズラの実 (大田区平和島公園) 2023/02/14
6月に撮った時にはヘクソカズラの葉に覆い尽くされてシャリンバイはほとんど見えなかった。
シャリンバイとヘクソカズラの実 (大田区平和島公園) 2023/02/14
この写真はGoogleレンズで調べてもヘクソカズラとは出てこない。ヘクソカズラと特定できる特徴は葉や花にあり、ヘクソカズラの背景の大半を締めているのはシャリンバイである。
ヘクソカズラの実 (大田区平和島公園) 2023/02/20
ヘクソカズラの実は食用ではないが、厚生労働省の
【自然毒のリスクプロファイル】にはジャガイモが上位に載っている。ジャガイモは様々な要因で芽以外の部位にも大量にソラニンが残る物があり、もちろんそうした物は弾かれて市場には出回らない。しかし、学校の実習などで栽培したものは、せっかく子供が育てたのだからと調理実習に回してしまうと集団食中毒を引き起こすことがある。
ツクシとハナニラとヘクソカズラの実 (横浜市旭区帷子川) 2023/03/11
ツクシンボウはスギナの胞子茎で、隙間が開いたものを指で弾くと煙のような緑色の粉が出てくるが、それがスギナの胞子である。
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